2004~2005年に副作用が原因で市場から回収されたcox-2阻害薬(鎮痛薬)における、心筋梗塞および脳卒中のリスク増大をもたらす作用機序が、新しい研究で明らかにされました。
かつて広範に使用されていたcox-2阻害薬rofecoxib (商品名:Vioxx)およびvaldecoxib (同Bextra)は、いずれも心血管イベントリスクを高めることが研究で示され、それぞれ2004年および2005年に市場から回収されました。
また、同じクラスに属するセレコキシブ(日本での商品名:セレコックス)は、現在でも販売が継続されているものの、心血管イベントリスクを有するために「ブラックボックス警告」(最も強い警告)が表示されています。
米ペンシルベニア大学(フィラデルフィア)トランスレーショナル医療治療学研究所長のGarret FitzGerald氏らによる今回の報告では、cox-2阻害薬がcox-2酵素阻害による疼痛緩和作用に極めて優れている一方で、血管の収縮および凝血(clotting)を防止する酵素を阻害することにより、心血管系の微妙なバランスを乱してしまうと言います。
米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(ボストン)のChristopher Cannon博士は、「血液中には、凝血および血管拡張防止と同様に、凝血と血管収縮に対するバランスが存在します。このことは、凝血と凝血防止、動脈の収縮と拡張には一定のバランスが存在することを意味するが、今回の研究では、cox-2阻害薬によって防御的サイドが打ち負かされてバランスが崩れ、収縮をもたらすサイドだけが残るため、凝血および動脈収縮のリスクが高まることがわかった」と述べています。
Cannon氏は「この問題は回収されたVioxxだけにとどまらない」と付け加えています。
多数の人が利用しているセレコキシブやイブプロフェンをはじめ、あらゆるNSAID(非ステロイド性抗炎症薬、cox-2阻害薬もNSAIDの1つ)に同じ問題があると言います。
例外はナプロキセン(商品名:ナイキサンなど)で、この薬剤には抗血小板作用があり、脳卒中および心筋梗塞のリスクを低下させる効果があると考えられます。
同氏は「この問題は用量依存性であり、cox-2阻害薬の使用量が多いほど心血管イベントリスクが高くなるため、必要最小量を使用することにより、疼痛をコントロールすると同時に、血管への害を抑制する必要がある」と述べています。
今回の研究は、医学誌「Science Translational Medicine(サイエンス・トランスレーショナル医療)」5月2日号に掲載されたほか、米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン版に4月9日掲載されました。(HealthDay News 5月2日)
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